屋上庭園

ハンドメイドと日々のこと

現実感のなさが心地良い〜『針がとぶ』

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『針がとぶ』

吉田篤弘さんの針がとぶ、を読んだ感想です。 

 

吉田篤弘さん(クラフト・エヴィング商會)の作品の魅力は現実的という言葉と

かけ離れた所にあると個人的に思っています。

  

実は現実が勝ちすぎて心に余裕がなく、しばらく吉田篤弘さんの作品から

離れていた時期があり。

今また改めて作品を読み返してるところなのです。

 

現実感のなさが心地良い

 

月面で眠る猫、クロークルームに残る運命のコート、八十日で世界を一周した男と常夜灯に恋をした天使。6月の観覧車、真っ白なジャケット、針がとぶレコード…クラフト・エヴィング商会の物語作家が紡ぐ、月と旅と追憶のストーリー。

 

久々に読んで、これこれ、この感じ!と思いました。

暖かいけど少し寂しい雰囲気の文章をさらさらと読んでいくうちに

どんどん世界に引き込まれていく。

現実をすべて飛び越え、世界が変わるような気持ちさえしてくる。

 

 

ひとつひとつがまったく違う話のようで、リンクしています。

すべて読み終わったときに絵が現れるけど読者に少し委ねられるような…。

 

 

レコードの針がとぶ瞬間、おばの日記、惑星で昼寝する猫、長袖の島。

 生活に必ず必要なものではないけれど、心を豊かにするものたち。

 そういうもの、そういうものの空気を書き留めたこの本自体が

登場人物が言う『あともう少しで消えてなくなってしまうもの』

なんじゃないかなと思いました。

 

 現実はあまくないから

 

 朝の通勤電車で読み終わって、そんな事をつらつら考えながら出社して、一番最初に待ってたのは…。

未入金になっている売掛金の督促という一番現実的な仕事でした。

まぁそんなもんですね…。

 

 

一瞬で現実に引き戻されてしまったけど(笑)

空気感は消えることなく海外旅行の後のような不思議な感覚が残ります。

 現実はあまくないからやっぱりこういう本が私には必要だと思います。

 

 

坂道の途中/振り向いて/少しだけ海の見えるところを/探す

 

 

そんなことをしてみたくなる気持ちを呼び起こしてくれる素敵な本でした。

 

 

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私の作るアクセサリーの屋号であるatelier toit(屋上のアトリエ)は、

クラフト・エヴィング商會の本に出てくる屋上のレコード屋さんからも

イメージを得ています。